今回も羆嵐と同様に、貧しい集落でのお話。
今回は山ではなく漁村だ。
主人公は伊作というまだ10歳にも満たない男の子だが、現代の子供とは違い、かなり逞しい。
年季奉公に出た父親の代わりに、漁にも出るし山へも入る。
生活は貧しいが、それが当たり前なので、特に悲壮感などは無いが、常に飢餓の恐れが背後にあるのでサバイバルな生活がそこかしこに感じられる。
隔絶された漁村に伝わる風習を題材にした物語で、宝くじ的なイベントが一転して村に最悪の事態を引き起こすというストーリー。
ただ、それは本当に最後の方に起こるので、それまでは江戸時代と思われる貧しい漁村の季節の移り変わりが描かれている。
どちらかというと、そっちの風景の方が印象的。
今だったら、どんなに隔絶された土地でも、これほどの伝染病が蔓延すればきちんとした病院で治療が受けられるが、
この時代ではあっという間にバタバタと死んでいく。
そして、祈る他為す術もない。
この本を読み終わって、ふと目の前でテレビを見ている我が子を見ると、
本当に良い時代に生まれたなぁとしみじみ思う。
と同時に、伊作ほどの逞しさは到底望めないのだなぁと、これもしみじみ思ってしまうのでした。