【読んでみた】保守とは何だろうか【中野剛志】

Posted by yonezo in 書評 | Leave a comment
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いくら論理的に反対を叫んでも一向に収まらず賛同者が湧いて出てくる新自由主義思想・政策の猛威。

期待していた?アベノミクスも、いろいろと残念なお知らせが重なって本当に諦観の域に達したような感じの昨今の著者…。

だいたい君たち自称保守的な事をうそぶいてるけど、やってることは完全に新自由主義的政策ばかりじゃん。そもそも保守って何なのよ!そもそも何で保守なのに社会をぶっ壊すような新自由主義的政策を信奉するの!?いやいやいやお前らは断じて保守ではない!それを俺がこの本で証明する!!

という所から出発したかは定かではないが、19世紀イギリスの保守主義者コールリッジの思想言論から紐解く「保守とは何か?」

3回ほど読んだがスルメだ。まぁ読んでも内容を記憶してないできてないだけかも知れないが。

書評も書こうかと思ってたのにとにかく内容が広範囲かつ膨大でこの貧弱な思考力では無理。
ただ俯瞰して思うのは、やはりプラグマティズムの重要性

この社会を取り巻く環境には一貫して正しいというようなルールなどは無く、歴史的な慣習や認識から醸成される常識などから、面倒でもその場その時代に即した、可能な限り正しい方法を時間をかけてでも議論・選択しなければならない。

考えるのが面倒な人間はどうしても、一貫したルールを作って守ってすぐに結論や結果を得ようとしがちだが、科学は万能ではなく、国家・社会・経済に完璧に適合する方程式などは存在しない。

例えば…。

国家も家計も借金は悪いこと、赤字は解消しなきゃダメ。なので借りたお金は早く返しましょう。節約、緊縮、構造改革!
自由は素晴らしい!そうだ国家・経済・貿易も自由にやろうぜ!
競争は素晴らしい!競争があるから向上がある!あ、競争に負けた人は自己責任です。
人間は常に革新しなければならない!今よりも良い物を作るためには古いものをぶっ壊してもOK!伝統や既存の概念に縛られるのは後退である!

…。
疲れるのでこのくらいにしよう。

まぁ正直「保守」というのが何かって、個人的には全然興味無いんですが、
内容が面白かったので、マル。

最後にケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」から有名な一節を。

「経済学者や政治哲学者の思想は、それが正しい場合にも間違っている場合にも、一般に考えられているよりもはるかに強力である。
事実、世界を支配するものはそれ以外にはないのである。
どのような知的影響とも無縁であるとみずから信じている実際家たちも、過去のある経済学者の奴隷であるのが普通である。
権力の座にあって天声を聞くと称する狂人達も、数年前のある三文学者から彼らのキチガイじみた考えを引き出しているのである。
私は、既得権益の力は思想の漸次的な浸透に比べて著しく誇張されていると思う。もちろん、思想の浸透は直ちにではなく、ある時間をおいた後に行われるものである。
なぜなら、経済哲学および政治哲学の分野では、25歳ないし30歳以後になって新しい理論の影響を受ける人は多くはなく、したがって官僚や政治家やさらには扇動家でさえも、現在の事態に適用する思想はおそらく最新のものではないからである。
しかし、遅かれ早かれ、良かれ悪しかれ危険なものは、既得権益ではなくて思想である。」

いつの時代も自分の意思や安寧とは無関係にルールが作られ変更され、事態は一変し、生活が脅かされる危険性を孕んでいる。

防衛するためには戦術や防備・武器が必要だが、それを統制するのは思想であって、故に思想を鍛え続けなければ本当に大事なものさえ守れないという事になる。

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