リフレ派による新自由主義批判への批判に思う

Posted by yonezo in 日記 | Leave a comment
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昨年末から勃発している、リフレ派(田中秀臣、上念司、倉山満)による新古典派経済学、新自由主義への肯定と、それに続く公共事業、財政出動によるデフレ脱却を唱える藤井聡、中野剛志、三橋貴明らへの批判についてずーっと考えていた。

中でも上念司氏、倉山満氏の本とかはいろいろ読んでいて感銘を受けていたので、最初は正直言って 「なんで共著も出してた三橋貴明さんを否定するようになったのかなぁ?」 と思っていた。

どうやら、消費税増税を巡る件で倉山満氏が出演したチャンネル桜での一件が発端のようなんですが、正直よく理解できなかった。
氏の主催しているサイトで有料の音声により裏事情的な事を話している的な事を言っていたような気がするので、 まぁ表に出てこない部分で何かあったのかも知れません。
中野氏がTPPや増税の決断によって安倍政権の批判に回ってしまったから、それをもって「裏切り者」と思ったのかな。
ただ上念氏は三橋氏のメルマガにも寄稿していたんだけど、それを辞めただけじゃなくサイトに掲載されていた過去ログまでも全消去させるというのは、大人げないというか残念というか。
評論家としての思想信条に相違があったのかも知れませんが、できれば読めるようにしていて欲しかったなぁと思います。

で、その上念氏の現在の経済学の師匠的存在である田中秀臣先生が、youtubeで経済学について説明してくれているシリーズが豊富にあって、 批判の源泉となる理屈や経済学の理論を勉強しなきゃと思って見てるんですが、正直言います。

自称、中卒程度の低学歴低知的水準であるワタシには、
この経済学の理論・理屈がなぜ正しいと思えるのかが理解できない。

で、「原典を読め」とか、「これくらいの本は読んで勉強しろ」とか言われているようなのですが、それ読まないと現在の日本経済について考えたり語ったりできないの?と思うんです。まぁそうなんだろうけど。
田中先生が「視聴者は全員そういう原典を読んで理解している」という前提で話しをされているとは思わないんだが、 ワタシのように経済学を学んだことも無いし大学も出てないような人間には、こう聞こえるのです。

俺:「自動車レースに勝つためにはどうすれば良いでしょう?」
経済学:「あなたの持っている自動車のスピードが今より速くなるように改造すれば勝つ可能性は高まります。」
俺:「確かにその通りですね。」
経済学:「車のスピードをアップさせるには、エンジンの馬力をアップしてガソリンをガンガン供給できるようにすれば良い。」
俺:「それはそうですが、レースには路面状況とか天候とか乗っている人間の技術や特性のような複雑な問題もありますよね。」
経済学:「そういう複雑さがあるのは認めますが、とりあえずそういう事を上げていったらきりがないので、ここでは単純化したモデルで説明する事にします。」
俺:「それって、現実のレースに役に立つ理論と言えるのでしょうか。」
経済学:「だから本を読めと、原典にあたれと。まぁバカには理解できないか…。」

俺:「全く理解できません。」

てな感じ。
動画の中ではTPPだとか安全保障の問題だとかを言ってましたが、それについての説明は無いようです。
また、それが知りたいならこの本を読んで勉強しろと言われそうなんだけど、まずはTPPのコメ問題における安全保障の側面というのを認識はしているという事だよなぁ。
それについても、どこかで解説した動画がアップされてるんだろうか。

いくら2つの曲線の均衡点がどーのこーのと言われても、安全保障上の問題があるという巨大な係数はその曲線や均衡点を無意味にするほどの影響力があるんじゃないのかと思うのです。まぁ需要供給曲線を理解していないと言われてオシマイでしょうが

この間、ホリエモンが「農産物なんて自由化して海外から買えばいいじゃん。買えなくなったらどうする?って言うけど、そんなん現代ではありえないから。」 って言ってたけど、個人でそう主張するのはいいけど、これをもし国会議員が本当にそう考えてたら間違いなく日本はあっという間に滅びてると思いますよ。
俺の足りない脳みそで考えても、例えば水資源枯渇問題や世界的異常気象などで、世界的に生産国の農産物がダメージを受けた結果、日本への輸入がストップする事だって考えられるんじゃないかと。確かに可能性は低くなっているのかも知れませんが、ゼロではないという事がポイント。
まぁ、ホリエモンは「国内より高い値段で買えば売ってくれるでしょ。」って言うんだけど、自国民を飢えさせてでも外貨を獲得しようとする国ってどんだけあるんですか?って話しだと思うんですよね。
中国や北朝鮮からなんて買いたくないし、それ以前に食べたくないですし。

まとめると以下のようになる。

・新古典派経済学(新自由主義)は「自由貿易」や、経済活動における「競争」を良しとしている考え方である。
<疑問>
自由貿易を推進して通貨統合まで行ってしまったEUは、そのグローバル化のおかげで国家間格差の拡大が進み、所謂負け組となってしまった国(ギリシャ、スペインなど)は破綻寸前まで追い込まれ、失業率が非常事態なレベルまで上がる事になってしまったが、それでも「自由貿易」や「自由競争」は良いと言えるのか。
中野氏の著作を読んでいると、どうも現在の世界経済情勢的には適切に関税や規制を設定する保護貿易の方が国民国家にとって良い経済政策なのではないかと思えてくるのですよ。
まぁこういう事を書くと、批判する人にとっては「信者」とか「経済学を理解できないバカ」とかって事なんでしょうけど。
もしくは、必ずしも自由貿易やグローバル化が格差拡大や破綻リスク増大の原因ではないという反論だろうか。

また、「競争」の結果、淘汰された企業や個人が失業率を押し上げているような場合、そもそもこれら経済学の理論の前提が現実と乖離している件について、どう説明するのか。
例えば、農業自由化によって競争に晒され農家を続けられなくなった人達は、すぐさま他の業種に転業・転職できるわけではないという問題。
別に農業じゃなくても同じだと思いますが。
リカードの比較優位論の前提が、上記のような「労働者は失業しても転業・転職できる」「労働者の国をまたぐ移動は行われない」それと、しつこいようだが「生産物の安全保障上の役割を考慮していない」的な前提らしいのですが、そんなもん原典読まずとも 「机上の空論であり現実的じゃない。」と一蹴ですよ。
参考:リカードの比較生産費説の問題点

上念さんの言いたいこともこれを見ると良く分かるし、納得なんですが、

新自由主義の思想自体は素晴らしいとしても、今の状況で援用すべき考え方じゃないというだけのような気がします。
あと、ノーベル経済学賞を取ったマンデル=フレミング・モデルが無効だと言うなら、それを示してノーベル経済学賞取って下さいと、
ワタシは評論家なんで、そういう権威に従う的な事を言っているようなんだが、
ここを見ると、ノーベル経済学賞を取った学者が同理論を批判しているんだが、それについてはどう考えるのだろうかと。

経済学会で発表されているのかとか、ノーベル経済学賞を取っているのかとかで論理に権威を持つというのも、どうなのかなぁって思う。
学者であれば、そういうスタンスでの説明も許されると思うんだが、評論家はそういう権威に依らず、正当な論理なのかどうかを検証して解説するというのがまっとうなスタンスなのではないか、評論家としての存在意義なのではないかと思うのですよ。

そして、動画中でも仰っていたが、巨大地震が想定されている中ではある程度の公共事業による国土強靭化は必要だと思います。
これは、デフレだろうがインフレだろうが、金融政策vs財政出動とかの議論に関係なく、必要なものはやるべきだと思うのです。

「敵国との戦争から人命を守るために使われるのと同じ政府債務が、平時においては、失意と絶望から人命を守るためにも使われるのである。
戦争を戦うための政府の能力には制限がないのと同様に、恐慌と戦う政府の能力にも制限はない。 
両方とも、人的資源と物質的資源、頭脳そして勇気のみにかかっている。 」
エクルズ=( 1890年~1977年;ルーズベルト大統領に ニューディール政策を進言し、後のFRB議長となった経済実業家)

家が老朽化し、次に地震が来たら崩れるかもしれない、家族が死ぬかもしれないという状況で、借金を恐れて何もしないというのが合理的な判断なのだろうかという事だ。
上念さんも、公共事業自体を否定はしていないというのであれば、こんなに激烈なやり方で公共事業批判を展開しなくてもいいのになぁという感じがする。
つか、「公共事業だけやってればいいんだ!」って誰が言ってたんだろうか?
今までアベノミクス批判の紫BBAとか日本破綻論の藤巻健史とかはほぼ実名で批判してたのに、今回は暗黙の了解的な感じで批判しているのが、何とも誹謗中傷的な感じがして嫌ですね。

・似非ケインジアンは不況脱出には財政出動しか認めていない。
<疑問>
似非ケインジアンが三橋・藤井・中野その他の公共事業推進派を指しているんだろうが、「財政出動だけ有効」とか、そんなこたあぁねぇだろwww
金融政策だけじゃダメ、財政出動も同時に行わないとジャブジャブになった資金が資産市場に殺到して金融バブルを起こす可能性が高いという事を懸念しているってだけなんじゃ?
通貨安になって貿易黒字で株価上昇で賃金上昇で経済復活!というのも分かるんですが、金融政策だけでそんなに上手くいくのか甚だ疑問です。

また、財政出動だけして公共工事ジャンジャンやればOKなんて、誰も言ってないと思うんだよなぁ。
「金融政策だけじゃダメです、金融政策は必要ですが、どちらかと言うとデフレ期には財政出動の方が効果があります。」というのは藤井先生が言っていたような気がします。
それでも、財政出動だけでOKなんて、誰も言ってない。
この辺、変なレッテル貼りな印象です。

 

と、ここまで書いて下書きのまま放置していたんだが、なぜかと言えば

ひょっとして俺の考えは間違ってるかも知れない、新自由主義って、本当は素晴らしいのかも!

という思想反転が起こるかな?と思っていた。
書いたはいいが、ちょっと考えたらやっぱり俺が間違ってたよーってなった場合に備えて、公開してなかったんだが。

ひと月経ったが、あんまり考え方も変わらず、逆に

うーん、やっぱ経済学に固執していて現実の世界情勢を鑑みてないし、理想や前提ありきな不自然かつ不十分な考え方なのは、田中先生の方なのでは?

と、まだ思っています。

自動車でなるべく早く目的地に到着するには、スピードを上げる必要があります。
ただ、その道程には平坦な道もあれば急な坂道もある。
急な下り坂において上記定義通りに「アクセル全開ダー!」とやれば、危険な上に衝突や事故の可能性が高まるという事と同じな気がします。

ある特定の状況においては、新自由主義的な経済運営は正しく正常に機能するのでしょう。
そういう意味では田中先生の言っている事も正しい。
ただ、今はその状況ではないというだけだと思います。

 

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