【読んでみた】顔のない独裁者 「自由革命」「新自由主義」との戦い

Posted by yonezo in 書評 | Leave a comment
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過剰なまでに「自由化」を推し進めた結果の日本の未来を描いた近未来小説。

完全なるフィクションだが、小説中に出てくる数々の「自由化」政策は、現段階でも議論され、実現に向けて動き出していたり、その有効性や利益について実現を推奨する人達が多く存在するようなものばかりで、あながち「悲観的過ぎる」とも言えない背筋の寒さが感じられる作品となっている。

道州制の実現によって日本人同士が分断され、被災した地域への援助さえも他人事と化す殺伐とした世界。

警察・消防などの公共サービスさえ民間の株式会社が一般競争入札によって応札し、「サービス」として提供するようになる。必然的に「サービス」への対価を支払える者と支払えない者との格差が生じるが、支払えない者は競争至上主義の名のもとに「自己責任」という名目で黙殺される世界。

しかも投資分野の「自由化」により、それらの株式会社へ投資を行う株主が外国人という悪夢。

電力・水道・ガスなどのエネルギー供給についても、自由化が進み、参入自由化と競争の激化、それによる必然として合理化や淘汰が進んだ結果、地域間での極端な需給格差と不安定供給の状況が現実となる世界。

どれもこれも、昨今新聞・ネットを賑わせている「構造改革・規制緩和」と称する政策テーマ・問題である。
しかも、どれも夢想家による戯言というわけではなく、大真面目に主張している人達とそれを指示する人達が現実に存在している。

物語はそれらが現実となった日本において、荒廃した状況からテロ行為によってかつての日本を取り戻そうとするレジスタンスの顛末を描いたもの。
最後の展開が若干行き過ぎな感じを除けば、興奮とともに一気読み確実の一冊。

少し経済寄りの内容なので、基礎知識が無いと一度では理解できない部分もあるかも知れないが、
是非これはドラマ化して欲しいなと感じた。

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