英語化は愚民化【読んでみた】

Posted by yonezo in 書評 | Leave a comment
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プログラマという仕事柄、英語に接する機会は多く、稀なトラブルの解決策を探す過程で、どうしても英語で書かれた文章を読まなければならない事が結構あります。

実際、あまり日本人ユーザーのいないような新しい言語を習得する時に、日本語で書かれたマニュアルがほとんど無くて、英語(またはフランス語w)のマニュアルがほとんどの場合って、その時点でやる気を失います。

これを専門用語で「参入障壁」と言いますw

そういう時は英語が出来たらいいなぁと心底思います。

 

あとは数年に一度行くかもしれない、海外旅行の時とか、英語が出来たらもっとスムーズにいろいろな所に行けたり、楽しめたりするのかなぁとか考えます。

前者は仕事、後者はプライベート。日本に住んでいても英語が出来たら良いというのは疑いようのない事実であります。

ただ、それを飛躍させて「公用語を英語に」とか「会社では英語しか使っちゃダメ」とか言うのは、バカバカしい事極まりないと思います。

 

本の中には楽天社長の発言なども出てきますが、個人的には楽天が無くなっても全く困らないし、ユニクロにはお世話になってるけど、無くても困らない。

単なる一企業であります。

そんなたかが一企業のトップが、英語をもっと小さい頃から教えるようにしろとか、英語特区作ろうとか、大学や高校の授業を英語だけで教えろとか、国家国策に関わる重要な政策について、まぁ何様のつもりだ的な事を言っているわけです。

個人的にはこういう人の発言を目にする度に

「グローバル馬鹿」と心のなかで罵っております。

以前、imodeを作ったという夏野氏との対談で「プログラマが足りない、もっと学校でプログラミングを教えるべきだ。」みたいな事を言っていた時もそう思った。

「日本史より、プログラミングを教えるべき」

本当に胸糞悪いです。

 

グローバルに世界に物を売るためには英語で交渉できる日本人の人材が必要だ。→英語堪能な人材が欲しいから税金使って英語教育充実させろ。

ビジネス拡大のためにはシステム開発が必要だが、プログラマが足りない!→税金使って小さい頃からプログラミング教えろや。

 

繰り返される新自由(自分が良けりゃそれでいい)主義の横暴であります。

自分のビジネスは社会のために貢献してる。自分にメリットがある事は他人にもメリットがあるはず。他人てのは…日本人全員!なので自分のメリットは君のメリット!みたいな思考だろうか。

言うまでもないが、英語教育や英語自体を批判しているわけではない。

公用語化などの強制や優遇はおかしいだろうというだけ。

 

書中では、英語化の流れが推し進められると、まずは英語を学ぶために他の学問や知識の習得の時間が削られて、現在の日本人の知的レベルが低下するだろうと指摘されています。
逆を言えば、母語ではなく英語でしか高等教育を受けられないようなインド、フィリピン、韓国等の国より経済的にも日本の方が発展しているのに対し、日本においては英語の読み書きができなくとも母語による教育の結果でノーベル賞受賞者を何人も排出しているという事実を取り上げて、母語による教育が英語による教育よりも非効率であるというような事は無く、母語による教育が独自の文化や思考能力を育てる上でも有益だという事が述べられています。

これは妄想や想像などではなく、実際に英語でしか最先端の学問に接することができなかった明治期などの時代で、先人たちが苦労した経験を元にしているようです。(「当時と現在では状況が違う」とか言う人っているんでしょうけど…)

確かに、昔の様子を描いたドラマとか見ると、優秀な学生役の人って(そして勉強熱心)得てして病弱で早逝するエピソードがあったりするが、そういう事だったんだろうかと。英語を学びながら本来学びたい学問を学ぶ。大変な苦労ですね。

まぁそれはドラマの世界でしか見たことないので、なんとも言えないけど。

母語で学習できて、母語で思考・伝達できる。そういう事っていうのは単に誰か偉い人が日本語で本を書いてるから教えてるからというだけではなく、日本語の文献・教科書が存在しなかった時代にそれを日本語に翻訳する人や、日本語には対応する意味の単語が無いような英語を新しい単語を作って日本語に置き換えたりしてきた積み重ねの結果なんだと認識して、その労苦に感謝しなければならん。

有名な話しだが、「中華人民共和国」という国名の中で、元からあった単語は「中華」だけ。「人民」や「共和国」というのは、日本人が作った単語であり、それを中国が逆輸入する形で国名に使ったという話しがある。

和製漢語

うーん、日本人って偉大w

 

もしこうした「英語化」の取り組みが推し進められると、次に考えられる影響として「英語格差」の問題も取り上げています。

英語が出来る人とできない人で様々な格差が生まれ、果ては同胞意識や自国民への思いやりみたいな感情さえ失われてしまうのではないかと。

それは大袈裟だという意見もあると思うが、どうやらそう思うのは日本人や日本が英語化する事で利益を享受するであろう英語圏の人だけのようで、公用語としての母語を奪われた国や、歴史的な経緯から母語の文化的重要性を認識している真っ当な国の人からすれば、母語を守るというのは当然の事のようです。

本の中でも、過去に日本人が英語推進の立場から海外の有識者に相談した結果、「もっと母語を大切にしろ、英語化とかやめとけ。」的な指摘を受け続けてきたという事が書かれています。

自分で書いてて「なんでこんな当たり前の事をわざわざブログで書いてるんだろう?」と思うほど、当たり前の事なんだが…。

そして、私は英語云々の前に、まずは日本語の文章をもっとマトモに書けるようになるのが先…。_| ̄|○

著者が強烈に危惧するのが理解できます。

 

卑近な事で言うと、最近海外からの観光客が多くなっているという。それはそれで良いことだと思いますが、「日本観光で困ること」みたいなランキングがね、なんか嫌な気分になったりしますね。

外国人旅行者の日本の受入環境に対する不便・不満

実際にいるかどうか知らんが、日本人に英語で道を訪ねて、英語で答えられない日本人に対して「もっとなんとかしてよ。」と言うような外国人っているんですかね?なんで日本は英語通じないの?みたいな。

こういう事に対して「もっと日本人の英語力を向上させるべき」と叫んでいる人っていうのは、アメリカや中国やドイツやフランスやロシアに行ったら、日本語で道を尋ねるんでしょうか?

「日本に来たんだから日本語で質問する努力しろや。いつまでも戦勝国ヅラしてんじゃねーぞ。」という至極真っ当だと思われる日本人としてのプライドって経済成長や企業利益の前には簡単に捨て去るんでしょうかね。

ま、一番カッコイイ対応は、流暢な英語で

「せっかく日本に来てるんだから、少しだけ日本語を勉強して、たどたどしくても日本語で気軽に話しかけて、不便な所も楽しみに変えて旅行した方が楽しいかもよ?」

と言う事だとは思いますけどねー。

あーまたグダグダと長くなってしまった。長文失礼しますた。(著者メルマガの決まり文句をパクりましたw)

おっと、そろそろ娘の英語教室の時間だ、急がなくちゃ。ではではー。(^^ゞ

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