【読了】石油がわかれば世界が読める

Posted by yonezo in 書評 | Leave a comment
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BOOKOFF100円シリーズで買った。

最初は日本経済における化石燃料の立ち位置とエネルギー問題における石油の役割について知りたいと思って手にとったんだが、原発代替という観点よりも、石油を巡る(主に輸送エネルギーとしての)問題と歴史的な背景や環境への影響について書かれた本だった。

だが、これはこれで興味深い内容。違いがよく分からんという人もいるかと思うが。

松茸の価格高騰を巡る小話や、石油の利用が、それまでの石炭や薪などを燃やす事による環境汚染の問題を改善する一役を担ったという話しは、なるほど、石油による二酸化炭素の増加とかオゾン層破壊だとか、石油由来の有象無象の製品を忌避する人が聞いたらどう思うんだろうと想像してしまう。これはこれで嫌な性格になったもんだと。

石油の代替エネルギーについても書かれていて、安易な代替はやめるべきだという風に書かれている。
現状、石油の代替とは火力発電をその他の発電方法に置き換えるという話しとほぼ同義だ。
ただ、水力や風力、太陽光などの再生可能エネルギーは、生み出す電力は無限であり環境への不可が無いかも知れないが、設備・施設の設置や発電機器の生産・運搬等で莫大な環境への負荷が前提となっている事を指摘している。

全くもってその通りだと思う。

原子力への代替についてはあまり記載が無い。
個人的には代替として完全に置き換えるという発想ではなくて、バランスを取って利用するというのがベストだと思う。

ちなみに、原油輸送は中東との往復で45日間かかり、30万トンのタンカーで運ばれたとして、その量は日本での消費量の2日分との事です。
危険な地域・海域をどれだけ沢山のタンカーが日々石油を運んでいるのかと考えると、原発におけるウランの輸送効率だけを考えても、とりあえず代替エネルギーの確保と安定性が担保されるまでは原発を稼働させた方が良いのでは?と思うんだが、それはまた別の機会に。
ちなみに、30万トンタンカー1隻分と同等のエネルギーをウランに置き換えると、2トントラック一台分との事。
反原発の人の中には、原発停止による火力発電量の増加で日本が購入する石油の量が数兆円規模で増えている事に対し「ウランだって石油と同じように外国から買ってるから外的要因は排除できない!」とかさらっと言っちゃう人がいるけど、タンカーとトラックを同列で考えちゃう(というか考えないようにしている)のが、そもそもどうなんだろうかね。

それはさておき。

他にも現在代替となる可能性を秘めたエネルギーとして、日本の場合はバイオ燃料やメタンハイドレートが存在する。
ただ、それらも技術開発の途上であり、石油や天然ガスのように、容易に採取する事は現状まだまだな状況である。
世界を見渡しても、代替となるエネルギーはまだまだ存在するようです。
ただ、それを採収できるかというと、それは別問題であり、新たな油田を発見するのも、100本掘って3本当たればOK的な確率との事。

俺がまだ小学生くらいの頃は、あと20~30年もすると石油資源は枯渇するので、それまでに新たなエネルギー源を確保しなければならなという問題が社会化の授業でも教えられていて、新しいエネルギー源を求めて宇宙へ旅立つというようなアニメとか漫画が大流行だった記憶がある。

しかし、現在はこの「石油エネルギーの寿命」は伸び続けていて、まだまだ枯渇することは無いようです。
新たな油田・資源の開発と、先進諸国による省エネルギー政策の推進。そして地質情報の蓄積、開発技術の向上とそれによる採収埋蔵量の増加が主な原因との事。

そう考えると、今後も石油資源の寿命は伸び続けると考えるのも、あながち夢物語ではないのかも知れないが、依存してしまって安穏とするわけにはいかない。

近年は先物市場での原油取引が膨大な量に上り、すでに物理的に存在する原油の量を上回る取引が行われているようです。
そのため、原油価格は需給問題とは別に、投資家などの思惑で決定される事となっていて、時に原油価格の乱高下を発生させて経済の混乱発生の原因にもなっているとの事。

この辺から、歴史における石油の問題になってきて、思えば先の戦争もABCD包囲網など石油の禁輸措置がその発端になった経緯があります。

そもそも石油は石油メジャーと呼ばれる欧米の巨大企業による原油開発とその独占に始まり、戦後はOPEC(石油輸出国機構)がその位置を奪還。
1970年台には、そのOPECによる輸出禁止で、オイルショックが起き、現在も減産見送りによるガソリン価格の下落が世界経済に影響を与えています。

エネルギーの中でも石油というのは、歴史も古く、現代における石油の利用範囲も広範囲に渡っています。
その一部分だけを見て、判断するのは避けなければならないし、現実として恩恵を受けつつもその反対側では悪影響もあるという事についてももっともっと考えなければ、今後のエネルギー問題を語ることは出来ないと、いろいろ考えさせられました。

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